Witness1975’s blog

サイゴン特派員 ジャーナリスト近藤紘一氏(1940-1986)について

発掘されるもの

採掘

 2000年代に入って各家庭にパソコンが普及し、インターネットによる情報収集が当然のこととなったのは、周知のとおりである。そうした時間的制約を背景として、インターネット上の情報は、大まかにいえば新しいものに限られている。つまり、web配信など想定されていなかった数多の情報資産は、どこかに眠っているのだ。

 そのような資産が、あるときに人目に触れることがある。誰かが、眠っていた情報を地下から採掘し、地上に持ち出して日に当てるのだ。そのように私は、感じている。

 

特派員報告「サイゴン陥落の記録」(1975年(昭和50年)6月17日)

 前回記事「カブール陥落(8月16日更新)」に、有難いことに読者の方が情報を寄せてくれた。youtube上に、サイゴン陥落時に取材を行っていたNHKサイゴン支局の製作による映像が公開されているというのだ。

 

majesticsaigon.hatenablog.jp

 

 百聞は一見に如かずとは古い言葉だが、古いものを正しくないと根拠なく断ずることは、それがいつであっても「現代」という時が持つ悪弊であるように思える。映像の乱れさえ、それは一つの時代を映じているかに見える。

 南ベトナム最後の大統領として、ズオン・バン・ミンが就任後の大統領官邸の様子に始まる映像は、臨場感にあふれていた。

【以下、youtube掲載ページ↓】

https://youtu.be/k4ZQFpixXIg

 

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南ベトナム大統領官邸敷地(2018)

ほぼ日学校長だより

 「ほぼ日刊イトイ新聞」というメディアがあり、私はここが販売する「ほぼ日手帳」を愛用しているが、いわゆるオンラインサロンのようなものとして、「ほぼ日の学校」というサイトがある。

 そのサイトでは「学校長だより」が配信されており、近藤紘一について触れている回があった。2019年に書かれたもので、私は最近、これを発見した。

 

ベトナム研修旅行にて」
 2月15日から19日まで、ほぼ日メンバー総勢117名で、ベトナム研修旅行に行ってきました。こんな大人数の旅に加わるのは、中学の修学旅行以来です(高校の時は、所属していた運動部の全国大会出場とぶつかって、修学旅行をあきらめました)。

 行き先がベトナムだと聞いた瞬間に、心に決めたことが1つあります。行きの飛行機の中で読む本です。これ以外にないだろう、と思った本が1冊。近藤紘一『サイゴンから来た妻と娘』(文春文庫)です。

 

www.1101.com

 

 私はこれを、非常に良いぺージだと思った。このブログを訪れる人より、「ほぼ日の学校」を訪れる人が多いであろうことは明白なので、そうした場所が、近藤さんについて触れる機会を作ってくれることは、様々な面で良いことなのではないか、と思っている。

 

コロナ、戦争、共産主義

 出典が思い出せないが、作家の吉村昭が、「共産政権下の中国に自由はないということを言う人がいるが、私の戦争時代の経験に照らして、その様なことはない。戦時下には戦時下なりの自由があった」という趣旨のことを書いていた。

 だから私は、コロナ禍によって緩やかに何かが制限されている今の状態を、共産主義下の人々の暮らしや、戦争中の空気に近いものではないか、と考えている。私は自由に暮らしているつもりだが、マスクをしなければならない、ソーシャルディスタンスを取らなければならない、という制約を受けている・・・

 それらの制約は、医学的なエビデンスがあり、感染拡大を食い止めるためには「正しい」はずだ。しかし、戦時中や、共産主義下における制約は正しくなかったのだろうか。

 絶対的な正しさというものは、極めて常識的な、ごく限られた範囲にしか存在しないのではないか、と思う。