サイゴンのちょっと短い日⑩(2018ベトナム訪問記)
マジェスティック
<majestic ・・・威厳のある, 堂々とした, 荘重な. >
このブログのURLには、特に深い考えもなく、「majesticsaigon」という文言を用いた。近藤紘一について言及するブログを始めるに当たって、何か印象的な言葉はないか、と考えたときに、ふと思い浮かんだのがマジェスティックホテルのことだった。
近藤さんは、この「植民地時代から最も格式の高いホテル」のテラスから眺めた景色を振り返り、次のように語っていた。
今も、はっきり覚えている。
あのとき、私は、はるかに連なる緑と水と南国の大空を見渡しながら、自分がいつか必ず、この心広がるような風景の中に戻ってくるであろうことを、予感した。
HOTEL MAJESTIC
安ホテルを出て、サイゴンの街を3時間彷徨った私は、マジェスティックホテルに辿りついた。私は、近藤さんがあのように書くこの場所に、一度来てみたかった。
サイゴン陥落の際にも、それから40年超の月日の間も変わらずにマジェスティックホテルはここに存在したのだ。玄関前に停まるシクロが、タクシーに変わっても。
ドアマンの職責
沢木耕太郎がサイゴンを訪れた時は、日本からFAXで予約を申し込み、料金は八千円であったという。私は、前日と同じようにこの日もホテルの予約をしていなかった。観光シーズンである乾期の金曜日、空き部屋はないかもしれない。
それに、私はホテルの受付で観光用のマップをもらえれば十分満足なのだー、と自分に言い聞かせてから、ホテルのドアに歩み寄った。ドアマンは、五つ星ホテルに入りそうもない格好をした私に対しても、礼儀正しく職務を全うした。
(英語版の公式ホームページがあるのではないか、ということに気が付いたのは、先ほどの事だ。)
チェックインor・・・
カウンターで、宿泊が可能かどうか尋ねると、受付の女性が上役の男性に何かを確認した上で「1部屋だけ空きがある」と言った。一泊160USドルだという。続けて、サイゴン川に面したリバービューの部屋かどうかを尋ねると、「川には面していないが、コロニアル風の静かな部屋」ということだった。
私は、少しだけ迷った。前の2日間の宿泊代は合計で35USドルに過ぎない上、沢木さんの泊まった時から値段が倍になっている。そもそもコロニアルとはどういう意味なのだ・・・と。しかし、空いていた1部屋は、私のための空室だったのではないか、という論理を瞬時に構築し、宿泊の手続きを頼むことにした。
しかし、私は不安だった。昨日、市中のATMでベトナムドンの引き出しができなかったからだ。もし、同じようにクレジットカードが使えなければ、私の財産は帰りの航空券のほかには1万円しか残っていないのだ・・・。
<⑪へ続く>
1000文字で分かる「近藤紘一」 - Witness1975’s blog
※ コロニアル
植民地風、ということで、ベトナムにとっては旧宗主国であるフランス植民地時代の建築様式といえるだろうか。コロニアル様式の建築は,その土地の材料や風土と母国の建築様式の結合に特色がある、という。
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