Witness1975’s blog

サイゴン特派員 ジャーナリスト近藤紘一氏(1940-1986)について

サイゴンのちょっと短い日②(2018ベトナム訪問記)

majesticsaigon.hatenablog.jp

 

空港から市内へ

 

 空港を出たシャトルバスは、サイゴンの中央部へと通勤時間帯の街を走る。バスの前後左右にバイクがひしめき、常にどこかでクラクションが鳴っていた。バイクや車の車間は恐ろしく接近しており、私の持つ運転免許はこの国では決して役に立つまい、と思われた。

 バイクはHONDA、車はTOYOTAが最も多数派であるように思えたが、2018年のサイゴンでは、まだ主役はバイクのようだった。LINEキャラクターのクマやウサギ、ドラえもんといったキャラクターを配したヘルメットや、多様なデザインのマスクは、バイク人口の多さを物語っているとも思えた。

 空港を出て約1時間、かつてツゾー通りと呼ばれたドンコイ通りの突き当たりにあるマジェスティックホテルの前に停車した。ホテル前は、シャトルバスの停車場の一つになっているのだ。

 

グエンフエ通りで

 

 朝の8時になっていた。ホテルの前のトンドクタン通りを、サイゴン川の下流側に向かって歩けば、グエンフエ通りがあるはずだった。私は、かつて近藤さんが勤めた支局の存在した大通りに出て、朝食を取ろうと思った。

 ホテル脇の工事現場を曲がると、グエンフエ通りに出た。通りは、紛れもない「大通り」だったが、あまり活気がなかった。やはりサイゴンは都会になりすぎてしまったのかもしれない・・・かつて支局のあった方向へ歩くと、バイクに乗った老人に英語で声をかけられた。

「どこから来た?どこに行きたいんだ?」

 私は日本から来たことを告げ、この通りを歩きたいのだと言ったが、私の英語が拙いためか、「ただ通りを歩きたい」ということが理解できなかったのか、日本語の書かれたマップを示して、メコン・クルーズやクチ・トンネルに行かないか?と、バイクを押しながら老人は続けた。私は軽く手を振り、ちょうど右手に見えてきたグエンフエ書店に入ってやり過ごすことにした。

 

バインミー

 

 書店を一周し、私の好きな「ドラえもん」の人気が高いのを改めて確認してから再び通りを歩くと、バゲットに鶏肉と野菜のなますを挟んだ「バインミー・ガー」を売っている屋台を見つけた。「ガー」というのは鶏肉のことで、私の知っている数少ないベトナム語の一つだった。私はこの後、食事の注文に困るたびにガー、ガーと、言うことになる。

 20000ドン(約100円)で購入したバインミーを、近くのベンチで食べ始めると、先ほどの老人が笑顔で戻ってきて、隣に座った。食べ終わったら、どこに行くかと聞かれたが、私は日本のベトナム料理店で食べて以来すっかりお気に入りのバインミーをゆっくり味わいたかったので、目と鼻の先のサイゴン川を指さし、「リバーサイド」と答えた。

 

バイクに乗って

 

 しかしこの後、私は老人の誘いに乗ってバイクに乗ることになる。「ノーマネー」と老人は言うが、そんなはずあるか。「10万ドンだけしか払わない。ベトナムドンだ」と言い、渡されたヘルメットを被ってバイクの後ろに跨った。

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 彼が言っていた「タノウ!リバータノウ。クロス、サイゴンリバー、タノウ。」の「タノウ」が、トンネル(tunnnel)を意味していたことに気付いたのは、この記事を書く2時間ほど前のことである。

 

<③に続く>