Witness1975’s blog

サイゴン特派員 ジャーナリスト近藤紘一氏(1940-1986)について

スファヌボン・パテト・ラオの夏

私は,旅が好きだ。 沢木耕太郎流に言えば,軽度ではあるものの,旅という病にかかっているのかもしれない。この数か月,何度「旅に出たい」と思ったことだろうか。思い立ったが吉日,とばかりに家を出ることができないのは,「枷」である。 プライベートジ…

目的論

パソコンを買った話 私のブログの更新を阻む最大の障壁は,パソコンの起動速度だと思っていた。唸りをあげながら,起動するのを待つこと数分,といったことをたびたび繰り返し,無駄な時間を過ごしているのではないか,という思いは次第に強くなった。 昨今…

コロナの終息する頃には

45回目の陥落 今年も、サイゴンが陥落してしまった。なんだかんだと、4年くらいは言い続けている。例年4月は忙しく、例えばサイゴン陥落の10日前から、近藤さんの文章を元にカウントダウンしながら記事を書こう、などという取組も実現できずにいる。それに、…

常識を持って赴くこと

かつての戦争 己の決意を守ることがいかに難しいか、と思う。月に一度はブログを更新するはずが、いつの間にか季節が移り、世間の情勢も一変している。書かないからアクセス数が落ちる、やる気を失くす、そのようなスパイラルも影響がないとは言えないが、私…

ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争

「戦争」とは何か 多くの日本人が思い浮かべる「戦争」は、遠くの国で起こっている戦争か、食糧難に苦しんだ記憶を持つ「当時の子供たち」から語られる第二次大戦末期から終戦にかけての日本の姿だと思う。 「戦争はしてはいけない。」そんなことは至極当然…

イラン情勢が荒れている

情勢は急転する 「すまないが緊急事態だ。大至急テヘランに飛んでくれ」 二、三週間来、小康状態にあったイランの国内情勢が再度急転して、パーレビ王政の行く手が怪しい、このまま一気に革命に突入して、王政が崩壊することになった、という。何というタイ…

ギュウ詰めのスズメ。

鳥が好き 私は、たぶん鳥が好きである。その辺に鳥が飛んでいれば、何の鳥だろう?と思う。スズメ、ヒヨドリ、ハクセキレイ、まあカラスはどこにでもいるが、カッコウ、ウグイス、カワセミやヒタキも何度か見たことがある。 その鳥の名を知らなければ、みん…

君は、PANA通信を知っているか。

報道写真家 近藤幹雄 近藤紘一や沢木耕太郎の担当編集者を務めた元文藝春秋社の新井信が、新装版「サイゴンから来た妻と娘」に寄せたあとがきに、次のような一節がある。 私は近藤紘一のいとこである近藤幹雄氏に声を掛けられた。隠していて申し訳なかったが…

迷信

現代の迷信 私達現代人は、迷信などには捉われてなどいないと思いがちだ。しかしながら、私たちの周りには、実に多くの迷信が満ちているのではないか。近藤紘一がレポートしたベトナム戦争では、ベトナム軍兵士が作戦決行日の吉凶を気にするために戦況に影響…

満座に響く声

読書の波 自分の趣味を問われた際は、読書と答えることにしている。しかしながら、私は真の読書家とはいえないのではないか、と思っている。なぜなら、私の読書量には大きな波があり、5冊以上を同時に読み進めて月に10冊読み切ることもあれば、1冊の本が一月…

大宅壮一文庫での旅

大宅壮一文庫 大宅壮一という名前は、このブログの読者の皆様(何人いてくださるか心許ないが――)には、馴染み深い名前だろうと思う。近藤紘一の書いた「サイゴンから来た妻と娘」が、沢木耕太郎の「テロルの決算」とともに、第10回大宅壮一ノンフィクション…

サイゴンで雨に打たれたい

水をあげましょう。 ベランダのパクチーが枯れた。梅雨入りして油断したこともあり、水やりをサボったのがいけなかったのだが、命あるものにはやはり水が必要だ、と考えさせられた。懇切丁寧に育て上げたいかなるものにも、水は必要なのだ。柔らかく煮た鶏肉…

過ぎ去った季節の魅力

今年もサイゴンが 私はこのブログを書き始めて数年来、この季節に必ず思うことがある。年度初めの4月は忙しく、なかなか筆が進まない。やがて4月は終わりを迎え、それは同時に1975年4月30日のサイゴン陥落から、また一年が過ぎ去ったことになる。「今年もサ…

パリ協定の意味するもの-Paris Peace Accords-

パリ協定 世界史の授業で私を悩ませたものの一つに、「カール=シャルル問題」があった。これは私の造語だが、16世紀に神聖ローマ皇帝だったカール5世は、国によってシャルル2世と呼ばれ、カルロス1世と呼ばれた。これらが全て同一の人物を指すのだ、という…

私の台湾日記④【完結】

時の流れ 先日乗った飛行機から窓外の空を眺めていると、対向する飛行機が後方に過ぎ去っていった。あのように一瞬で過ぎ去っていく機体を、かつて私は見たことがなかった。これが相対速度か、と実感した。 「時間が早く過ぎ去る」と思うそのとき、私は果た…

私の台湾日記③

台湾東部へ (前回のあらすじ) 早朝、台北市内のドミトリーを出た私は、台湾鉄道台北駅から、急行電車「莒光号(きょこうごう)」に乗って台湾東部に向かう・・・ 宜蘭県・花蓮県 私が5年前にスペインを訪れた頃、北部のサンチャゴ・コンポステーラへ向かう…

私の台湾日記②

私の台湾日記 (前回のあらすじ) 台湾に旅立った私は、台湾桃園国際空港から地下鉄MRTで台北駅に降り立った。なぜか、トレンチコートの男が私に近付いてくる・・・ トレンチコートの男は、会話のできる距離まで近づいてくると、「英語はできますか?」と尋…

私の台湾日記①

「古本」と「古書」 今春、所用で群馬県前橋市を訪れた。用事を済ませ、地元の人気店でソースカツ丼を食べると、付近に古書店があるのに気がついた。気まぐれで店内を覗くと、そこには興味深い本の数々が陳列されており、書棚を巡って、楽しい時間を過ごした…

サイゴンのちょっと短い日⑯

サイゴン・ストリート サイゴンでも、ストリートでもあるからサイゴン・ストリート。私は、サイゴンの通りを歩いていた。 これまでのあらすじ 思い立って近藤紘一の愛した「サイゴン」、今のホーチミン市を訪れた私は、近藤さんにゆかりのあるマジェスティッ…

滑走路の暗殺

滑走路の暗殺 物騒なタイトルだが、その書き出しは美しい。 残照のマニラ湾ー。 ロハス通りのレストランのテラスから眺めると、観光ポスターそのままの色彩と構図である。ダイダイ色に燃える海と空、灰色から暗灰色に移りゆくちぎれ雲、その下の部分は海の向…

サイゴンのちょっと短い日⑮(2018ベトナム訪問記)

君の声はマジェスティック B'zがそう歌うのを聞いて、私は筆を進めなければならぬ、と思った。「サイゴンのちょっと短い日」は短期集中連載で終わる予定だった。それがいつのまにか書き始めから半年以上が経過してしまっている。連載が長引くと、なんだか一…

サイゴンの特派員 友田錫〈下〉

majesticsaigon.hatenablog.jp サイゴンの特派員 平敷安常氏の「サイゴンハートブレークホテル」では、平敷さんが友田錫氏に送った質問に対する答えが紹介されている。質問内容は、「ベトナムへ行った動機について」「報道の姿勢ないし視線について」「友田…

サイゴンの特派員 友田錫〈上〉

サイゴンの特派員 友田錫(ともだ せき) 今夏、旅先で新聞をめくると、友田さんの名前を訃報欄で目にした。 友田錫氏 (ともだ・せき=元日本国際問題研究所所長、元産経新聞外信部長) (中略)早大卒業後、東京新聞を経て産経新聞に入社、ベトナム戦争時…

100℃を超える岩盤

書き出しの動力源 文章を書くにはエネルギーが要る。ただ雑文を書き連ねるだけならば、さほどの事はないかもしれない。しかしながら、多少なり文章校正や、論理の整合性や、話題の完結性といったことをよくよく考慮すれば、容易に文章などは書けない、と思う…

池上彰の見るベトナム戦争

池上彰の現代史を歩く 「第6回 ベトナム戦争 小国はなぜ大国アメリカに勝った?」がいま、放送されている。番組の案内は、以下のとおりだ。池上彰の解説でベトナム戦争が振り返られ、私の知らないこともずいぶん語られている。 テレビ東京 池上特番|テレビ…

サイゴンのちょっと短い日⑭(2018ベトナム訪問記)

majesticsaigon.hatenablog.jp 独裁者のオウム サイゴン動物園での時間を満喫した私は、マジェスティックホテルに戻ることにした。その帰り際、鳥類の集められているエリアを通った際に、なんだがでっぷりと、或いはずんぐりとした生き物が視界の端に入った…

BANANA FISH  サイゴンからはじまる物語

BANANA FISH 本屋を歩いていると、レンタルコミックの棚に見慣れない漫画の置いてあるのが目に付いた。題名を「BANANA FISH」という。すぐ横にポップが置かれており、 7月5日からノイタミナ枠でアニメが放送されることが決まっていると書かれていた。 ニュー…

随筆

随筆 随筆という言葉をなんとなく読み流していたが、現在では常用外となっている「随う」とは、「従う」と同意であって、文字どおり「筆ニ随フ」ように心に浮かんだことなどを自由な形式で書いた文章をいう。今では、エッセイと呼ばれることが多くなっている…

「パリの近藤紘一」~ベトナム・ストーリーズ~

ベトナム・ストーリーズ 私はかつて、新聞記者になりたいと思っていた。物を書いて暮らす人になりたいと、ただぼんやりと願っていたので、そのうちに希望はどこかへ飛んでいってしまった。あるいは、魅力ある近藤紘一作品にもっと早くに出会っていたら新聞記…

顔もあれば眼もある本

開高健の激賞 サイゴン陥落の前後を記録した、近藤紘一の「サイゴンのいちばん長い日」の巻頭には、ベトナム報道の先達でもある開高健が文章を寄せている。初版の際には、カバーに掲載するための推薦文として文字数の制限があったと思われ、非常に短い文章だ…